補聴器と集音器、どちらを選べばいいのでしょうか。ここでは、補聴器と集音器の違いを比較し、選び方のポイントをご紹介します。それぞれの特徴を把握して、自分に合ったものを選びましょう。
どっちがおすすめ?補聴器と集音器の違いを徹底比較!
補聴器と集音器はそれぞれ、機能や販売先、買い替え頻度、価格などさまざまな部分で違いがあります。そのため、どちらが良いか悪いかではなく、求める性能が備わっているか、予算に合っているかなどをさまざまな観点から選ばなくてはなりません。ここからは、それぞれの違いを解説し、おすすめを紹介していきます。
比較ポイント | 補聴器 | 集音器 |
分類 | 管理医療機器 | 音響機器・家電など |
仕組み | マイクで拾った周囲の 音を機械で大きくして、 内蔵スピーカーで耳に届ける | 補聴器と同じ |
適応する難聴の程度 | 軽度~重度難聴まで幅広い | 軽度~中等度まで |
販売先 | 管理医療機器のため、 販売免許が必要です。 主には補聴器専門店や眼鏡店になります。 | インターネット通販や家電量販店など 気軽に購入できます。 |
使用開始までの流れ | ①かかりつけ医、耳鼻科等を受診。 ②専門店で購入。 ③認定補聴器技能者による 聞こえの調整を3~10回行う。 ④使用開始 | ①購入 ②使用開始 専門の調整がないため、 購入後すぐに使用開始できます。 |
周波数ごとの調整 | ◎ | × 最近はスマートフォンのアプリを 使って周波数に合わせた調整を行う 集音器も登場していますが、まだ少数派です。 |
買い替え頻度 | 4~5年ごと。 | 1~2年ごと。 |
価格 | 相場は片耳10~60万円。 10万円以下の物もありますが、 聴力に合わせた調整機能がカット されていることがほとんどです。 | 相場は5,000円~10万円。 集音性能や音量調節機能、 雑音カット機能の有無などによって価格が大きく異なります。 |
集音器を選ぶメリット・デメリット
- 何度もお店に足を運ぶ必要がなく、自宅から購入できたのがよかった!
「親が病院に行きたがらずに困ってました。まずは集音器から使ってみようという感じです。」(40代女性/主婦)
「補聴器は調整で何度もお店に行かないといけないと知人に聞いた。面倒だと思って敬遠していたが、集音器は購入後すぐに使い始められるのがいいと思った」(70代男性)
- 補聴器より試しやすい価格!
「補聴器は数十万円と高額なので、買ったのに使わなかったらどうしよう、という心配がありました。」
「試してみて、とテレビの音量が大きくなってきた父にプレゼントしました。ギフトで渡しやすい価格でした。」(40代女性)
- イヤホンのような見た目で、周りの人に気づかれにくい!
集音器は、補聴器のような耳掛け型ではなく、イヤホン型の製品も多く販売されています。
「年齢的に、補聴器にかなり抵抗がありました。おばあさんに見えてしまいそうと気持ち的に嫌で。購入した集音器は、ワイヤレスイヤホンみたいでとても満足しています。」(60代女性)
「見た目はイヤホンで、全く集音器に見えないのが購入の決め手でした!」(50代女性)
- 使い始めの違和感・不快感が強い。
集音器をつけると、聞き取りたかった声やテレビの音以外に、時計の音・冷蔵庫の扉を開け閉めする音・家族の足音なども聞こえるようになります。それ自体は良いことなのですが、今まで聞こえていなかった雑音や騒音が聞こえるようになるので、最初は騒がしさだけが気になり、違和感や不快感を感じるという方が多いです。慣れてくると、脳が必要な音を判断し、雑音を無視するようになっていきます。
しかし、低価格帯の集音器では、ハウリング抑制機能が搭載されておらず、ピーキーとした大きな音が響きやすいため、強い不快感を感じたり、頭痛を起こしたりする方もいます。ハウリング抑制機能のついた集音器を選ぶことをお勧めします。
- 慣れるまでに時間がかかった。
視力矯正で初めて眼鏡を着用すると、脳が慣れるまでは目が疲れやすい、といった状態と同様に、耳と脳にも慣らし期間が必要になります。しかし、聴覚(耳)は視覚(目)よりも、慣れるまでに数倍長く時間がかかると言われており、個人差がありますが、音のある生活に慣れるまでに数カ月かかることも多いです。今すぐに以前の聴力を取り戻したい、と考えている人にとっては、その期間が苦痛に感じることもあります。
しかし、どんなに高額な補聴器でも、慣らし期間は必要になります。焦らずゆっくり慣らしていこう、という気持ちで向き合うことが大切です。
補聴器を選ぶメリット・デメリット
- より自然に聴こえやすい
補聴器は、高い音や低い音など聴こえづらくなっている周波数に合わせた音量調整が可能です。その分、調整に時間はかかりますが、「聴こえる音はそのままに、聴こえづらい音だけを大きく」できるので、聴こえている音も大きくしてしまう集音器に比べると、より自然に聴こえやすいと言えます。
しかし、インターネット通販等で販売されている低価格(10万円以下)のデジタル補聴器の中には、周波数に合わせた調整ができない製品もあるため、注意が必要です。
- 医療費控除の対象
集音器と異なり、補聴器は医療費控除の対象です。ご高齢の方や、年金を受給している方でも、確定申告を行うことで医療費控除を受けることができます。(所得税や住民税が非課税の場合を除く)
ただし、医療費控除の対象になるための条件があり、「補聴器相談医」という資格を持った医師による診断が必須となります。かかりつけ医が補聴器相談医の資格を持っていない場合は、別の医療機関で診察を受ける必要があります。
参考:補聴器相談医名簿
- 小さくて目立ちにくい(耳穴式)
補聴器の小型化は進んでいます。耳奥に入れ込むタイプは、ほとんど補聴器が見えないほど小さな製品も登場しています。周りの人に補聴器を使っていることを気づかれたくない、気を遣わせたくないという方にお勧めです。
- 高い価格に見合う価値を感じなかった。
「うるさく感じて使うのをやめてしまった。お金の無駄だった。」(70代女性)
どんなに高価な補聴器であっても、スピーカーから流れる音を聴くことになるので、使い始めは違和感や不快感を感じる方がほとんどです。集音器も同じですが、快適に聴こえる(脳が雑音を無視する)ようになるまで、聴こえの慣らし期間が必要です。
- 買い替えの頻度が高い。
補聴器は医療機器として承認されており、法律で定められた耐用年数が5年とされています。実際、補聴器ユーザーの買い替え頻度の中央値は4年※となっています。例えば、70歳から90歳まで使用した場合、4~5回の買い替えが発生することになります。
※一般社団法人 日本補聴器工業会による「Japan Track2022」統計データによる/14,061人の代表サンプル
注意事項
難聴は、加齢によるものだけではありません。感染、遺伝、騒音(環境)が原因の場合もあります。難聴の種類には、外耳や中耳に問題がある伝音性難聴、内耳や聴神経に障害がある感音性難聴、両方に影響がある混合性難聴があります。それぞれの原因、症状、治療法は異なりますので、難聴の兆候に気づいたら、できるだけ早く医師や聴力検査士に相談することをおすすめいたします。